『中村達也 独り叩き旅 IN防府』

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2015.09.24(木)at 防府・BAR印度洋

定刻になると彼は何食わぬ顔で店内にスタスタと入ってきて、おもむろにドラムセットに座って叩き始めた。

 

 

革のつなぎにきっちりセットしたリーゼント。

最初、遠巻きに見ていた観客は、少しずつ少しずつドラムセットににじり寄ってく。
私も負けじとにじり寄る。

わずか2メートルくらい先で中村達也が狂ったようにタイコを叩いてる!
もうね、それだけで血沸き肉踊る!

彼にしてみれば、5分くらいの挨拶代りのひとたたきが終わると、既に滝のような汗が。
立ち上がってつなぎを腰まで下ろして座りなおすと、もっと近くに来ていいよと手招き。
とたんに人の列は、黄色いグレッチのドラムスを取り囲む。
私は出遅れて、背の高い女の子のちょっと後ろからのぞき込むポジション。
彼から見て右側の大きなシンバルの後ろあたり。

黄色いグレッチのドラムスはピカピカに磨いてあって、触るのもはばかられる雰囲気を醸し出していた。
みんなちょっとくらい触ればいいのにすぐそばまで寄って覗き込みはしても決して触らない。
それは結構、不思議な光景だった。
中村達也という人は、自分で機材を運び込み、自分でセッティングをする。
いつか読んだ雑誌のインタビューでそういう風に答えていたことを狂ったように叩き続ける彼を見ながら思い出していた。
今日もきっとその儀式は行われたんだな。

どうやら撮影もオッケイのようで、そこかしこでフラッシュがたかれる。
店内の照明は暗く落としてあるので、フラッシュなしのスマートフォンのカメラでは、真っ黒にしか映らないだろう。だからみんなフラッシュを焚く。
てんでに焚かれるフラッシュに照らし出される彼は、そりゃもう神々しいことこの上ない。
私は結局、彼を撮ることができなかった。
手が動かなかったし、ずっと彼を見ていたかったのだ。

そのまま30分弱彼は叩き続けた。
彼は目を閉じて狂ったように叩いている・・・ように見えるけど、本当はそうじゃないかもしれない。

彼の頭の中にはリズムの設計図があるのだろうな。
そのくらいリズムには迷いがなく、ミスタッチもない。
やり損ねて初めからやり直しなんてことも全くなかった。
リズムは正確で、どのタイコからもきれいで澄んだ音を出す。
シンバルもハイハットも音がぐしゃっとなることはない。
ゆっくり始まったときでも終わるころには高速のスピードになっている。

でもやっぱり、得意というか好きなリズムパターンというのはあるんだね。
気が付くともうやったパターンに戻ってるらしく、時折、あれ?これさっきやったわと言いながら叩いていた。
彼は叩きながら好きなように歌ったり喚いたりする。
Blankey Jet Cityの頃からそうで、浅井健一はそれに少々困ってたらしい。
今回は前半やたらと“俺はバイクだー!”と喚いていた。
歌ってる内容は、体制に対する不満だとかそんなものだったと思う。

そのまま30分弱彼は休まずたたき続けた。
そののちおもむろに椅子に立ち上がって、休憩します!みんな、たくさん飲め!と宣言し、店を出ていった。
誰かが車で休んでるのかな?と言っていた。

人がひいたドラムセットの前、私はそのまま居座って、大きなシンバルの前に陣取った。
左となりに女性2人客の人が同じように立っていて、話しかけられたので“ハイハットの音がすごかったですね~”なんて言ってみた。
2人は私と同じ町からやって来た人たちで、MANISSH BOYSと斉藤和義のファンだった。
チバユウスケとやって来た時のライブにも来たそうで、その時は人が多くてまるで彼の姿は見えなかったそうだ。
そこで私は、昔体験したBlankey Jet CityのライブやLOSALIOSのライブの話を気が付いたらしていた。どのくらい休憩が続くのかわからなかった。
20分くらい経った頃、彼は最初と同じようにスタスタやって来ておもむろに椅子に座った。
ペンキで汚れた白い半そでのつなぎに着替えていた。
そりゃそうよね、さっきのつなぎはもう汗だくだろう。

第1打。大きなシンバルをバーンとたたく。
途端にその風が私をあおった。
なんてことだ!中村達也の叩いたシンバルの起こした風が私をあおってる!
人の後ろでは気が付かなかった振動を感じる。
そもそも普段、こんなまじかでマジに叩いてるドラムスを見ることは皆無だ。
文字通り、中村達也が命を削ってタイコをたたいていることを実感した瞬間。
私の中で眠っていた何かしらの情熱が目を覚ました・・・かもしれない。

CDやライブで聞いたことのある彼のドラムスだけど、まじかで見て気が付いたことはたくさんあった。
まず彼は、タイコを目で見ながら叩いていない。
このあたりにあのタイコがあるという感覚で、だんだんスティックをスイートスポットに移動していく。
確信が持てたらそこから力強く叩き始める。
シンバルのスイートスポットもよく分かっていて、常にきれいな音を出す。

そうそう、休憩のとき、彼の知り合いらしい2人くらいが、スネアドラムを叩いていたけど、皮の張りは緩めだった。
本人が叩いているときは、スパンスパン抜けてきつめに張っているのだろうと思っていたのだけど、けっこうゆるゆる。
叩き方で音が締まるんだと少々鳥肌。

ハイハットをしつこく叩いている場面があった。
フットペダルで開いたり閉じたり、音の長さや強弱を耳を傾けて聞きながら叩いてた。
狂ったように見えるけど、感覚はつねに研ぎ澄まされていて音に傾けられてるんだなあと。

私の口からは何度も“すごい”というつぶやきが漏れ出てしまった。

それからまた30分弱、彼は叩き続けた。
前半と違って歌も叫びもほとんど出てこない。
タイコを叩く至福を味わっているようだった。
左足から繰り出されるバスドラムのリズムはずっと正確で、よれることがなかった。
それがあるから、全体のリズムが締まっているし、スピードが代わってもあれ?と思うことがない。
とにかく彼の手足から叩き出されるリズムのあらしの中、ユラユラと漂っていられた。
残念ながら、不勉強で今はこういう風なリズムかな?とか具体的に表現できない。

そしてまた彼は、椅子の上に立ち上がり、今日はこれで終わり!と宣言する。
え~っと不満が上がったけど、かれはまたな!と言って、若干よろよろしながら店を出ていった。

私は隣の女性2人と今見たもの余韻に浸りつつ、店を後にした。
たった数分前の出来事を私はこの先何年も思い出し、忘れることができないと思う。
すごい夜だった。

おまけ。
たどり着いた立体駐車場。
よろよろと自分の車に向かっていた私の前にある柱の陰から一台の白いステーションワゴンが現れる。運転席からこちらを見ていたのは・・・!!
サングラスをかけさっぱりした顔の中村達也は、あっけにとられる私をよそに数メートル先の料金精算機に滑り込んだ。
いつまでも見ているわけにもいかず、私も車に乗り込んでその後ろに続いた。
なんだかお金を入れるのに苦労してたみたいっす。

同乗者がいるのかどうかわからないけど、とりあえず、東京から自分で運転してきたようだった。
すげ~人だ。
ちなみに翌日は、奈良でライブだったようだ。
う~む、すげ~パワーだ!

なんか私も頑張りたくなってきたぜ。

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